新説 『兎と亀』と『醜いアヒルの子』

(基礎動作を見直す取り組みとその方向性⦅スポーツ競技編⦆)

 

当施設ではスポーツ競技の成績で進学をしていたり、進学を目指している様な中高生のトレーニングを担当させて頂く様なケースも徐々に増えて来ました。

 取り組んで頂いているトレーニングの量やその他で個人差は有りますが、多くの場合彼等の競技パフォーマンスがトレーニング取り組み開始3、4ヶ月を経過した頃から急激に向上し始めます。

競技経験も長く、学校やクラブチームでも相当な練習量をこなしている選手のパフォーマンスが、短期間で急激に向上し始める様な事例は余り多くはないと思います。

 

中学3年生、野球部のエースで4番の選手が、トレーニング取り組み開始から3回目のトレーニングで、既に球速が5キロ増えていた事例も有りました。

強化的な取り組みからは程遠いトレーニングに慣れて頂く段階でのお話しです。

本人の素直な性格(吸収力や理解力=生まれ持った身体的要素以上にトレーニング成果に影響を与え得る部分で有ると感じます)、高い取り組み意識からすれば当施設では想定内の数値で、むしろこれから先が楽しみです。

 

 あるプロスポーツのトップカテゴリーで戦われている現役選手(30代男性)の方からご自身のトレーニングについてご質問やご相談を頂く機会も有りました。

当施設で実技を交え3時間程やり取りをさせて頂きました。

プロスポーツの世界は非常に厳しい世界です。

脚光を浴びる選手がいる一方、結果を出す事が出来ずに毎年多くの選手が去って行く現実が有ります。

身体の動きを引き出す為に適切なトレーニングが成されていない部分が有る様に感じられましたので、その印象を正直にお伝えする形と成りました。

非常に人柄の良い方で、ご自身が取り組まれている競技に対して素人で有る私の話にも真摯に耳を傾けられ、ご質問までされる姿が非常に印象的でした(この時点で私自身何か感じるものが有りました)。

ご来館直後の競技会でご自身4年振りと成る好成績(優勝)を収められた事を、後日ご紹介頂いた方を通じ知る事と成りました(当施設にお見えに成る迄にどれ程の試行錯誤や葛藤が有った事でしょうか…)。

当然の事なのですが、プロスポーツのトップカテゴリーで戦われている様な方達は、たった一度の機会で有っても何かを掴み取り、確実に結果に繋げてしまう様な高い能力を持っています。

 

ゴルフに取り組まれている当施設の会員さんで、ホールインワンを達成された方が2名いらっしゃいました(打ちっ放しではなくコースをラウンドされてのお話しです)。

お二人ともホールインワンを達成された時点でトレーニング歴は半年弱でした。

当施設でゴルファーはお二人だけで、ゴルフ歴が長かったり(50代男性)、技術練習に熱心に取り組まれている(40代女性)方達ですがプロゴルファーでは有りません。

アマチュアゴルファーのホールインワン達成の確率には諸説有る様ですが、いずれにしても高い確率では有りません(毎週1回ラウンドされても1回ホールインワンを達成するまでに50年近く掛かると言う説も有る様です)。

トレーニングを始められて以降のご当人のゴルフの変化のお話し等を伺っていると、当施設と致しましても非常に興味深い事例と捉えています。

 

*トレーニング効果には個人差が有ります。

 

 ジムを訪れて頂く方達が取り組まれている競技は様々です。

柔道、バトミントン、バスケットボール、ゴルフ、野球等。

競技人口を反映してか球技関係が比較的多いでしょうか。

 

トレーニング指導時、場合によっては競技動作にまで踏み込みやり取りをさせて頂く私は空手によって育てられた人間で、球技等それらの競技についての取り組み経験は殆ど有りません。

 

 当施設のトレーニングはスポーツ競技動作にも直結する様体系付けられていますが、行って頂くトレーニングの動作にはその方の競技動作の傾向が顕著に現れます。

 その傾向を指摘し、改善、更に向上する方向へ誘導させて頂く役割がトレーナーで有る私の仕事です。

 

 当施設で私が指摘させて頂き、皆さんに改善、向上して頂いている動作の部分は身体の基礎的(本質的)な扱い方の部分です。

重力下で身体が受けている影響や身体の構造、その他様々な角度から考察し導き出された基礎動作です。

特定のスポーツ競技やコミュニティ(団体)、また指導者等が違っても変わらないで有って欲しい本質的な部分です。

 

 トレーニング指導を担当させて頂いていると、実はその基礎に成る動作が余り知られていなかったり、誤解、また軽視されている印象を強く受けます。

基礎動作を見直す様な自身を深く掘り下げる作業は、結果が現れる迄に時間が掛かる様な事も多く、許されている時間との戦い等も有る為に、情報の入手が容易に成った現代では敬遠されてしまう部分も多いのかも知れません。

インターネット等で非常に多くの方々が様々な情報を発信されていますので、受け手側の混乱も有る様に感じます(無責任で誤った情報も多い為、受け手側の物の見方や考え方が問われている様にも感じます)。

 

以前、人間の関節は梃子構造に成っていて、同じ梃子でも構造は人によって違いが有ると言うお話をさせて頂きました(筋肉が骨に付着する位置関係や骨や筋肉の長さに違いが有り、関節の梃子の特性にも違いが有る)。

 

本来競技技術は人それぞれ異なるべきものです(プロスポーツのトップクラスやオリンピックのメダリストクラス等高いステージで競技されている方達のプレイスタイルは同じ競技でも各々異なり、他にはない独自の⦅革新的⦆技術が高いアドバンテージと成っている例は多く見られます)。

 

人気選手、トレーニング理論の進展、その他により影響を受ける競技技術にはトレンド(流行)が有り変遷して行く物も多いと思います。

その技術を体現する為の固有のフィジカル(身体能力=優劣では無く個性として捉えての物)が必要と成り真似の出来ない様な物も多いと思います。

 

当施設のトレーニングでは、基礎に成る動作(本質)を探究(鍛錬)する過程で様々な身体能力(神経筋機能、筋肉の柔軟性、関節可動域、動作スピード、身体の連動性、筋出力、バランス能力、持久力、巧緻性等etc./正しくトレーニングが出来ますとあらゆる能力が向上し失われる物が有りません/⦅このタイミングでこの様な動きが出来たなら…⦆と思った事が有る選手の方は多いと思いますが、その様な場合、一つの身体能力⦅例えば筋力だけ⦆が向上したとしてもその動きを体現する事は困難です=様々な身体能力が複数土台に有って一つの動きが可能と成ります)が向上しますので、向上した身体能力を基にした自身の身体に適合した技術の発見や創造に繋がる様な事も多く、それらはスポーツ競技に於いては大きなアドバンテージへと成って行きます(相応のトレーニングの量や競技動作に落とし込むトライアンドエラーが必要とされる部分では有ります)。

 

当施設のトレーニングでは結果を出す為に時間が掛かる様な取り組みも勿論多く有るのですが、自身の基礎動作(本質)に目を向けそれ等を改善する方向性で、結果を早く(最短で)引き寄せる事が出来た事例は前述の他にも幾つか有りました。

 

自身の基礎動作を深く掘り下げる方向性の取り組みは、情報の入手が容易に成った現代に於いても、正しく行う事が出来れば非常に優位性の有る取り組み方法です。

 

 当施設でトレーニングに取り組んで頂き、トレーニングに対するイメージや感覚が大きく変わったと言われる様な方々もいらっしゃいます。

 そのイメージや感覚を言葉や文章で表現し全てをお伝えする事は難しいですが、イソップ寓話の『兎と亀』のお話しで、兎と亀を才能で比較する様な一元的な見方が変わってしまったり(勿論亀の努力を否定する意味のお話しでは有りません)、アンデルセン童話の『醜いアヒルの子』のお話しで、醜いアヒルの子が初めから美しい白鳥の雛で有る事が見えているイメージ、言い換えますと、トレーニングの進行とともに、自身に対する不確かな思い込みや、他人に対する第三者的偏見が薄れて行く感覚、でしょうか…(*イソップ寓話やアンデルセン童話を揶揄している訳では有りません)

 

取り組まれている競技(価値観)やトレーニングをする目的(目指す場所)は違っても、当施設でお互いに共感して頂ける部分かも知れません。