(トレーニングの方向性とリンクした眼の扱い方)
眼をリラックスさせる事の大切さ
当施設のトレーニングでは身体をリラックスさせる事を重要視して一つの大きなテーマにしています。
それは眼の扱い方に於いても同様です。
眼や口元等顔の緊張は身体の動きにも影響を与えます。
オリンピックのスプリント種目でメダル争いをしている様なレベルでは口元の表情にも注意して練習をするそうです。
当施設ではトレーニング時に両目で一点を見詰める(凝視する)様な眼の扱い方をされている方にお声を掛けさせて頂く事が有ります。
その際には視線を一点に集中せずに広範囲をボーっとした意識で見る様な眼の扱い方をお勧めしています。
両眼で一点を見詰めると眼が緊張し早くに疲れてしまいます。
眼の緊張は身体にも伝わります。
野球のバッティング等では相手投手の投げるボールを良く見る様にとの指導も多い様でが、その一方でボールを見ようとすればする程身体が緊張しバットが出なく成ってしまう為見過ぎてはいけないとの真逆の指導も有る様です。
プロ野球選手でもバッティングでボールを出所から手元迄全ては見ていないと言う言い方、表現をされている方もいらっしゃいます。
剣道や少林寺拳法等の武道でも一点に捕らわれず広い視野で全体を柔らかく(ぼんやりと)見る(感じる=捕らえる)との表現や指導も聞いたりします。
(日本人のプロボクシング元世界チャンピオンで150年に一人の天才と評された方のトレーニング映像を見た事が有りますが、高速で動くスピードボール(ボクシングの練習器具)を叩く際左右の眼球が殆ど動いていなかった事は非常に印象的でした)
両眼で見詰めない眼の扱い方
歩行や日常生活動作、スポーツ競技動作では筋肉は脊柱(背骨)を境に左右が真逆の活動をしています(左右の同じ筋肉同士が拮抗関係)。
例えば、歩行動作中の広背筋(背中の逆三角形の筋肉)は骨盤を引き上げ身体を前方へ運ぶ役割を担っていますが、脊柱右側の広背筋が短縮し右側の骨盤を引き上げ前方へ運んでいる様な状態では脊柱左側の広背筋は弛緩して伸ばされています。
身体の左右両側を同時に同様な動作で使う様な身体の扱い方(足を左右均等に配置しバーベルを担ぐ様な日常生活やスポーツ競技では殆ど見られない特殊な動作)は身体を緊張させ易いとも言われています。
眼も左右を拮抗させない扱い方をする事で眼自体の疲れや緊張を回避し身体の良い動きや眼と身体の協調性を引き出して頂く事が出来ます。
歩行動作では遊脚(振り出される脚)側の眼を主に使う様にする事(逆側の眼を閉じたり全く使わない訳では有りません)がトレーニングと成ります。
スポーツ競技では構えや動きで前に出る脚側の眼を主に使う(歩行動作同様逆側の眼を閉じたり全く使わない訳では有りません)様にする事で身体の良い動きや眼と身体の協調性を引き出して頂く事が出来ます。
動体視力と動作の関係の一例
動作の初期から身体(体幹)の回転運動や上下運動が大きく成ってしまう様な動作は視線のぶれ(頭部の上下動や回転)を招き、瞬間的に高速で動く物体を捕らえる様な高い動体視力を求められる競技にとっては不利に働く事も少なくないと思われます。
着目して頂きたいのは股関節の動きです。
当施設のロワモーションマシーンやレッグプレスマシーンでのトレーニング動作の様に、動作初期から中盤に掛けて、下肢の軸(スリージョイントインライン)を形成して、股関節の伸展(膝や足首の動きを最小限に抑えた股関節の曲げ伸ばし=膝や足首が大きく働くと身体の上下動が大きく成ってしまいます)で直線的に地面を押え、動作後半のタイミングで加速的に体幹(骨盤)を回旋させる様な動作(身体の移動)が有効です。
野球のバットスイングの基本と言われているインサイドアウトや、剣道や空手、格闘技等の脇を閉めた腕の扱い方とも調和する、パワーやスピードの発揮にも非常に有利に働く股関節の扱い方です。
*スリージョイントインライン=大転子、膝の外側、外くるぶし(薬指のライン)を直線上に配置して形成する動作上の軸
私(トレーナー相星)の経験(変化)
私がトレーニングに取り組み始めたのは40代に入ってからです。
当時既に試合からは離れ、道場生の指導や相手をする稽古が中心でした。
私は元々視力はそれ程悪い方では有りませんでしたが(40代半ば迄は両眼ともに裸眼で1.5程度)50代に入ると流石に視力も少しずつ落ち始めていました(右1.2、左0.8程度)。
トレーニング取り組み以降の40代は現役時代の30代より動体視力が向上し、相手の打撃に身体が勝手に(無意識に=意識するより早く)反応している感覚が道場稽古では確実に有り、視力が落ちた50代以降もトレーニングを実施出来ている時はその感覚が低下する事は有りませんでした。
動体視力には視力検査等で得られた視力の数値その物よりも無意識下の(神経信号が大脳を経由せず意識に上らない)動作前に働く身体の機能や、眼の扱い方とそれにリンクした身体の扱い方が大きく影響しているのだと実感出来た経験です。
トレーニング効果には個人差が有るとは思いますが、以上スポーツ競技で必要とされる動体視力を鍛えたり、日常生活で眼を疲れさせない為のヒントに少しでもして頂く事が出来ましたら幸いです。